2011-01-29

新生iKnow!を触ってみての感想

以前から私が英語学習のために使っている「smart.fm」ですが、先日ついに「サービス終了のお知らせ & 有料新サービスへの移行」という話が出てしまいました。月額1000円ですか……。有料新サイトの名前は「iKnow!」で、以前からのユーザーであれば周知の事実ですが、現行のsmart.fmがリニューアルする前のサービス名称が「iKnow!」でした。

料金を払ってまで続けるかどうか微妙なところですが、トライアル期間は無料とのことなので、まずは新生iKnow!を使ってみないことには判断できません。というわけで、ちょっとだけ触ってみての感想をまとめてみました。だらだら書いていたらすごく長くなってしまいました……。

サイト全体

新生iKnow!サイト

日記・フォロー・コメント・アクティビティストリーム等、SNS的な要素はすべてなくなっています。少なくとも、学習画面では自分以外のユーザーの影をまったく感じさせません。他のユーザーの存在が目に入るとしたらサポートフォーラムだけです。

コース管理(smart.fmでの「ゴール」は、新生iKnow!では「コース」と呼ぶようです)において、「フォーカス」「ライブラリ」という新たな概念が導入されています。学習したいコースを「フォーカス」に追加すると、「次の学習をいつやるべきか」というのを管理してくれるようです。「ライブラリ」は、将来的に学習を行いたいコースを入れる場所、というより、フォーカスに設定できなかったコースが入る場所のようです。というのも、「フォーカス」に追加できるコースは「最大8コース」という制限があるためだそうで……。smart.fmの頃は、やっているコースすべてに対して「次回の学習: 今がオススメ」と出してくれていたんですけどねえ。

「フォーカス」に入れているコースについては、進捗率が10%増えるごとに「チェックポイント」というイベントが発生するそうです。「チェックポイントに達すると、次の学習セッションはこれまでの確認も兼ねてトレーニングアプリを用いた学習となります。」とのことですが、試しにとあるコースの進捗率を89%→90%にしてみても、特に何も起きませんでした。しばらく様子を見ることにしますか。

進捗率が100%になったコースは「学習完了」という枠に移動されます。smart.fmの頃は、学習完了したコースでも、しばらくすると「次回の学習: 今がオススメ」と復習を促すようになっていましたが、新生iKnow!ではこのあたりどうなっているのか分かりません。「復習モード: ON/OFF」という謎の設定ボタンがありますが、これが何を意味するのかもよく分かっていません。まあ、「復習する」ボタンというのがあるので、最悪それを使うようにすればいいのですが。これについてもしばらく様子を見ることにします。

週ごとの目標学習時間

強化された点としては、全体的に「学習時間」を重視した作りになっていて、いくつかフィーチャーが追加されてユーザー側にも自分の学習時間を意識させるようになっています。例えば、「週ごとの目標学習時間」を設定できるようになっていて、目標達成までに必要な学習時間も表示されます。私は「7時間(一日1時間ペース)」に設定しましたが、最大値が「10時間」なのは人によっては少なすぎるかも。

学習時間カレンダー

ホーム画面には日々の学習時間が記載されたカレンダーが大きく貼り出されていて、週毎・月毎の合計学習時間が表示されるようになっています。先週・先月の学習時間と比較して、今週・今月は何%増減した、といった情報も載っていて、「過去の自分に負けないように勉強する」みたいな目標も立てられそうです。SNS要素が消えたこともあってか、「自分との戦い」みたいなストイックな感じがあります。

smart.fmの頃は「学習アイテム数」が重視されていましたが、個人的にはアイテム数よりも(より定量的な値である)「学習時間」を重視していたので、この方針はかなり私好みです。smart.fmには通算学習時間とか月・週ごとの学習時間とかを出す機能がなかったので、APIを使って学習時間を表示するアプリを自分で作って補っていたくらいでした。

ちなみに、SNS要素のあった旧iKnow!やsmart.fm時代に「アイテム数」を重視していたのは、それはそれで非常にうまいやり方だったと思います。「アイテム数」とか「スキルレベル」といった数字が、あたかもMMORPG(やったことありませんが)でいうところの「強さ」「レベル」みたいな位置付けになっていて、アイテム数を上げるために頑張ってレッスンを繰り返して、結果として学習時間も順調に増えていくという正のスパイラルを構築できていたのではないでしょうか。

学習アプリケーション

新iKnow!アプリ

新iKnow!アプリはJavaScriptベースで再実装されました。旧iKnow!アプリやアイテムドリルβと似通った雰囲気の画面ではあるのですが、ユーザーインターフェースはいろいろと異なっています。いま現在、smart.fmユーザーは、旧iKnow!アプリ・アイテムドリルβ・新iKnow!アプリの似たような3つのアプリで学習できるわけですが、それぞれどういう違い・どういう特徴があるのか、ちゃんと分かっている人は誰もいないんじゃないでしょうか。

従来のiKnow!アプリあるいはアイテムドリルβと比較して、まだまだ未完成な部分も目につきます。例えば、カーソルが上下でループしないとか、長いセンテンスを表示させた際にレイアウトが崩れるとか。また、今の時点では設定画面すら見当たりません。完成度については今後の課題でしょうか。せめて、JavaScriptベースのアイテムドリルβでできていたことは、同じくJavaScriptベースの新iKnow!アプリでできるようにならないものでしょうか。アイテムドリルβでは、単語選択の際に、単語の冒頭の数文字をキーボードで入力することで、その単語の欄にカーソルを移動させることができていたのですが、新iKnow!アプリでも早急に導入してほしいところです。

従来のDictationとBrainspeedはなくなってしまいました。一応、Dictationに似たアプリとして「リスニング」というものが用意されていますが、だいぶ違いが多いようです(後述)。Brainspeedについては後継になるアプリは存在せず、完全に消滅です。新生iKnow!にする際に、Flashベースのアプリをすべて廃止する方針でもあったのかもしれません。今回の発表に際し、smart.fmユーザーの中では主に有料化の面について取りざたされていますが、iKnow!アプリの変更も含めて、お金を出したとしても今までのsmart.fmと同じことができるわけではないという点も個人的には重要な問題だと思っています。

スキルアップトレーニング

スキルアップトレーニング: リスニング

新生iKnow!サイトで新たに加わったアプリは「スキルアップトレーニング」というもので、「リスニング」「スピーキング」の2つで構成されています。前述のとおり、「リスニング」は従来のDictationに似ています。しかし、従来のDictationでは、1周目に虫食い問題をやった後、2周目に全文打ち込みの問題という構成でしたが、それと比較して新しい「リスニング」は「虫食い問題だけ」という仕様になっています。これでは簡単すぎて負荷が少なく、トレーニングの効果が薄いように感じられます。個人的には、ただでさえsmart.fmのDictationは(1周目の虫食い問題の時点で全文が分かってしまうため)ヒントが多すぎて、リスニング力がなくても回答できてしまうと思っていたので、この変更は嬉しくありません。

スキルアップトレーニング: スピーキング

もう一つの方の「スピーキング」は、いわゆる「シャドーイング」を意識したアプリで、お手本を聞いてその音声を真似ながら声に出していくというものです。マイクを使って自分の声を録音するフィーチャーがあるので、一瞬「発音の良し悪しを判定してくれたりする機能でもあるんだろうか」と期待したのですが、さすがにそんなことはなく、単に自分の発音とお手本とを聴き比べできるだけです。しかし、改めて自分のひどい発音を聞かされると、もう少しちゃんと発音できるようにトレーニングしなくては……と思わされます。

スキルアップトレーニング: コース選択画面

これらの「スキルアップトレーニング」ですが、なぜだか理由は不明ですが「フォーカス」に登録しているコースでないとトレーニングを始めることができません。iKnow!アプリによる単語学習と、リスニング・スピーキングのトレーニングを別々に行いたい場合、やりにくくてしょうがありません。好意的に見れば、「iKnow!アプリの進捗に合わせてこれらのトレーニングを連動して行える」ということなのかもしれません。おそらく、前述の進捗10%ごとの「チェックポイント」のタイミングで、このトレーニングが始まるのだと思われます。

もう一つ気になるのは、リスニング・スピーキングのどちらも「コースごとの完了センテンス」を管理していないようにも見えるのですが、気のせいでしょうか? 少なくとも、コースごとにリスニング・スピーキングを何%進めたかが分かるようになっていないように見えます。これもしばらく判断は保留です。

この新しく加わった「スキルアップトレーニング」ですが、全体的にはかなり「おまけ」っぽい感じがします。もともとsmart.fmの頃からDictationは「二級市民」という感じの扱いでしたが(Brainspeedはもう一段下)、新生iKnow!サイトにおいてはさらにiKnow!アプリ(による単語学習)に偏重しているようにも感じます。

とはいえ、それはある意味当然といえば当然かもしれません。語学学習において、Ceregoの強みである脳科学うんぬんの学習ロジック(特許取得済み)を生かせるのは「ボキャブラリ増強」くらいしかないわけで、そこに注力するのはCeregoとしては必然なのでしょう。しかしながら、新生iKnow!サイトを「語学学習サイト」の位置づけとするのであれば、iKnow!アプリによるボキャブラリ増強一辺倒でなく、語学学習に有効な他の学習も重要視するべきだとは思いますが。

料金について

「月額1000円」というのを聞いて、第一印象として「ちょっと高い」と感じたのですが、こういうのはだいたい「980円」みたいな値付けにするものではないのかと疑問に思いました。これはもしかして、はなから個人向けがメインではなく、企業での社員教育用とかをターゲットに考えているのでしょうか? 企業向けに売り込むのであれば、当然、大口顧客向けの割引という話も出るわけですが、その際に「定価」が4桁の方がよりディスカウント感が高い……そんな邪推も浮かんでしまうような価格設定です。

とはいえ、新生iKnow!におけるSNS廃止・学習時間の管理の強化といった方向性を見るに、企業向けユースというのは芽がありそうな感じはしました。

それと、現在のsmart.fmには(主に日本語を勉強している)外国人の方が多いのですが、この円高の昨今に「1,000 JPY/month」というのはどう思われるのでしょうか。日本人が(必要に迫られて)英語を勉強するのと違い、(すでに英語を習得している)外国人が日本語を勉強する理由は基本「趣味ベース」である場合が多いと思っています(Anime, Manga, etc...)。smart.fm内の周りの反応を見ていても、おそらく有料化後も継続する外国人の方はかなり少なそうです(寂しい話です)。

名前について

「iKnow!」→「smart.fm」→「iKnow!」の流れは、ITエンジニアとしては「ボーランド」→「インプライズ」→「ボーランド」の故事を思い起こさせます。「smart.fm」という名前(& サービス)が成功だったのか失敗だったのかについては、正直よく分かりません。

ちなみにドメイン名も、「www.iknow.co.jp」→「smart.fm」→「iknow.jp」と、今回またjpドメインに回帰しています(「.co.jp」と「.jp」はだいぶ違いますが)。そういえば、最初期のiKnow!は「日本人向けの英語学習サイト」だったわけですが、そういう意味でも(事実上)原点に戻ることにことになりそうですね。収益のことを考えると、やはり「日本人向けの英語学習」が一番の金脈でしょうし。

結局どうしよう?

まずはトライアル期間が終了するまで(旧smart.fmユーザーは3月末まで・新規ユーザーは2月末まで)、smart.fmと併用しつつ使ってみて、それから判断することにします。学習データを同期できる「スマートフォン対応アプリ(2011年3月上旬)」の出来も気になりますし(それにしても、リリース時期が遅い……)。

ただ、現smart.fmにある大量の学習コンテンツ(コース)ですが、新生iKnow!では使えなくなるものが多数ありそうなので、そういったものは今のうちにsmart.fm上で学習しておくことにします(少なくとも、パートナーが提供している93個の公式コースは、新生iKnow!では使えなくなります)。

拙作「Smart.fm List Converter」を使って、各種コースをローカルにダウンロードするのもいい考えです。どう長く見積もっても、このアプリが使える(動作する)のは3月末までだと思いますので、ご利用はお早めに。

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